Thursday, December 10, 2009

二の巻き(2)

東京への出張が終わって、実家にも数日立ち寄って、最後にもう一度東京の郊外の大学の工学部でセミナーをする。自分の研究を誰かが面白いと思ってくれるかどうか、セミナーの意味はそれに尽きる。自分の研究のことは自分がもっとも良く知っている。世界標準でどの当たりかもわかるから、いつも上を目指してやっているので、満足するということがない。それでも、自分が何かを見つけてわくわくしたり、面白いなあ、と思う部分もあって、そのあたりを、他の人にもちょっとでも分かってもらえて楽しんでもらえたらよいなあ、といつも考えながら話をしているつもりだ。しかし、こういうセミナーや発表は、研究活動のオマケみたいなもので、できるだけ少ないにこしたことはない。そういう交流はフィードバックが得られて役に立つ部分もあるが、研究時間との引き換えになっているという点において、多くの場合でペイしない。今回は休暇のついでであったので差し引きプラスと言ってもよいかも知れない。
 工学部で生物学をやるというのは厳しいものがある。学生は卒業したからといって、資格がとれるわけではなく、この世知辛い世の中、卒業の一年以上も前から就職の心配ばかりをしている。そんな学生や院生に頼って研究をしなければならず、彼らに論文を書かせて、無事に卒業なり、学位なりを世話しないといけないのだから、教官側は大変だ。研究において、品質と量を両立させるのは不可能である。やれば結果が必ず出るというものでもない。研究指導はするが、結果に責任はもてない、という当然のことが、若い人やその親に簡単に理解してもらえるとは思えない。卒業できなかったら、学費は何のために払ったのだ、と思うのが、資本主義社会で若い時から育った最近の若者やその親である。若い人々が周りにいるというのはうらやましいが、彼らや彼らの親の期待に沿ってやりたいと思うプレッシャーはかなりのものだろう。