Monday, May 11, 2009

一の巻(15)

日本人が都会へ集中することは、結構これに近い屈折した心理があると思う。都会の狭いところで、都会に住む事の不自由さをぶつぶつ言う隣人たちの中で、自分もぶつぶつ不平を言いながら暮らすのが好きなのだ。大学もそれに近いものがあると思う。研究したいがために安い給料で大学に残るのだと思うのだが、中には、大学の下らない雑用に忙殺されるのを喜ぶ人もいる。それを研究が進まないことの言い訳にする。そして、ますます、雑用にはまり込み、ますます研究から遠ざかって、急に教育に熱意を燃やし出したりして、周囲のまともな人に迷惑をかけたりまでするのである。中島義道は、大学はそこに職を求める者が利用する場所であり、自分の好きな事をする権利を手に入れるためのものである、と言ったが、(こう公衆の面前で堂々と本音を吐くと、嫌われると思うのだが、どうみても彼は、人から嫌われることに必要以上の耐性ができてしまっているようである。この耐性は後天的なもののように見える)、もちろん、大学に限らず、職場というのは本来そうしたものなのである。

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