Thursday, April 23, 2009

一の巻(10)

はっきり言って、なぜ、この大学が二流大学であるのか、よく理解できた発表会であった。しかし、自分の業績からは、二流大学にしかチャンスがないのは分かっているので、ちょっと気分の滅入る面接となった。もしオファーが貰えても、ここで二流の研究者として、糊口をしのぐためだけに就職するぐらいなら、お医者さんに戻って地域医療に貢献する方が上である。きっとその方が世の中のためになりそうな気がする、そう思った発表会であった。(一度だけなら多くの事柄は経験に値する、とポジティブに考えることにする)
 その日の夜は、一人で土地のおいしいものでも食べて、ゆっくりするはずであった。少しタクシーに乗れば、温泉町もある。しかし、気分は暗く、日本の田舎町と田舎大学に対する後味の悪さだけが残って、楽しくすごそうという気持ちになれなかった。夜になると気温がさがってきた。この田舎町でも幹線沿いには、インドやスリランカから出稼ぎに来た人たちがやっている料理店が散在する。駅前には白人系の外国人もちらほらする。日本のこの規模に田舎町で外国人をみるなど、昔はなかったことである。不景気で東京から押し出されたのだろうか、などと考える。田んぼや畑の前の幹線道路で、客寄せのために、旗を振っているインド人の姿を見るのは悲しい。ある小学校の給食に、うどんとひじきとクロワッサンが出たという話を読んだことがあるが、田んぼと畑とインド人、という組み合わせも、パッとしない。空腹となってきたので、せめて、名物ほうとうでも食べて、暖まるかと思って、駅前のほうとう屋にはいると、「ほうとうは30分以上かかる」と言われて、がっくりする。極太麺なのでゆでて煮込むのにそれだけかかるのだそうだ。それで、15分でできるという「おざら」というのを注文した。同じような極太麺だが、煮込まないので多少早い。ゆでたら、水で「さらさら」とすすいで冷やすので、「おざら」というそうである。妙なことに、この冷たい麺を具の入った暖かいツケ汁につけて食べる。これは、どう考えてもおかしい。ツケ汁は生温くなり、麺は外側だけがヘンに暖かい。味付けはともかく、この生温さでは、おいしさ半減である。どうして釜揚げにしないのか、あるいは逆に冷たいタレにしないのか、と心の中で文句を言いながら食べる。食べ終わって、寂しい駅前をとぼとぼと昭和の匂いのするひなびた安ホテルに帰った。そして、この悪口を書き始めたのであった。

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