Monday, April 13, 2009

一の巻(7)

アメリカでは何度か就職活動で面接に行ったこともあるし、セミナーに呼ばれたこともあるので、研究者の就職活動がどのように行われるかについて漠然とした予想というか期待があった。今回は、教授選ということでもあり、いくら何でも、それなりの対応があるのであろうと思っていた。アメリカでは、もっとジュニアの教官職であっても、普通2日の日程で、1時間ずつの発表を二回行い、10人以上の教官との個人面談があり、夜はそれなりのレストランに連れて行ってもらって食事のもてなしがある。丁寧なところだと空港まで、教室のチェアの人自ら送り迎えする。つまり、それだけの時間と金を使って、候補者をじっくり吟味すると同時に、よい人があれば、オファーを出した場合に向こうが是非来たいという気持ちにさせるようなもてなしをするのが普通である。勿論、そうした職には、多ければ数百の応募があって、倍率だけみれば、買い手市場のように見えるのだが、現実は、優秀な人を見つけるのはそう簡単ではなく、大学側もその点をよく承知しているから、面接に2日の時間をかけ、もてなすのである。日本の大学がこうした活動にどれだけ吝嗇かはある程度想像していたので、晩飯を奢ってもらおうとか、駅まで送迎リムジンをだしてもらおうとかは、勿論、全く念頭に無かった。しかし、面接が発表30分、質問10分、個人面談20分という合計1時間のスケジュールには、正直、恐れ入った。アメリカではジュニアの教官を雇うときでさえ、その20倍近くの時間をかけて、お互いを理解し合い、将来の仲間となる人を選ぶという目で面接をするのである。初対面で書類でしか知らない人とのたった一時間の面談、そんなもので何がわかるのか。だいたい、30分で研究、教育の概要と抱負を発表しろというのが無理である。今やっている研究の一部だけでも30分では足りない。普通、研究だけのセミナーでも1時間やる。それは1時間必要だからである。この30分の発表で、聴衆がわかることは、言葉がちゃんとしゃべれるか、コンピューターが使えるか、ビンボウゆすりとか変な癖がないかとかいう、研究能力を評価するのに余り役に立たない情報ぐらいである。

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