Thursday, April 9, 2009

一の巻(6)

時間に近づいたので、スターバックスを出て、地理のわからない病院と大学の敷地をうろうろし、その辺で大掃除の最中らしい事務員のような人に道を聞く。愛想は悪いが、わざわざ二階まで案内してくれる。管理棟の薄暗い廊下の突き当たりにある医学部長室に通された。さすがに広々とした絨毯ばりのオフィスで、大きな革張りのソファーセットがあって、剥製とかの置物がかざってあったりする。しかし、革張りソファーの皮の一部はすり切れているし、絨毯の色は褪せて安っぽいし、窓の木枠はシミ状に汚れている。こういったものの修繕に回す金がないのだなあ、とわびしい気持ちにさせられた。応対してくれた秘書の人は、「今、三番目の方の面接が進行中ですので、もう少しお待ち下さい」と言った。私は、どうもトリのようであった。教授選の面接を数人をまとめて、同一日にやるというやりかたに、私はまたまたショックを受けた。ここの大学の選考側は、教授職に応募してきた仮にも長年研究という活動に地道に取り組んできたプロの学者に対して、会社の新入社員を雇うときのような対応しかしないのである。早い話が、プロを迎え入れるという態度ではなく、「雇ってやる」という一段上からの卑しいやり方なのである。その後の選考委員長の話の様子からは、こういう形式をとるのは、学者という同業者に対して、さすがに失礼であるとは思っているらしいことが見て取れた。(大学に予算がないので、こんな面接になってしまったのです)と心の中では、ちょっとは申し訳ないと思っているような話ぶりだった。

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