Monday, March 30, 2009

一の巻(3)

 、、、とはいっても、郷に入れば郷に従え、これが日本のシステムである以上、悪法も法なりと、仰せの通りに書類を作成する。研究は続けたいが、やりたいことができないなら、廃業して健康管理センターで検診医師になればよい(その方が収入もずっとよい)そんな気持ちで応募したものだから、「仕事ください」と卑屈にお願いするというような態度でもない。とにかく、このような日本の教授選考システムであるから、応募したときは、そもそも書類選考で多分落とされるだろうと思っていた。面接にわざわざ呼ばれるとは思っておらず、面接への招待が来たときは、宝くじで三千円あたったようなときのような、意外な気持ちしかしなかった。おそらく、教授選の格好をつけるための当て馬なのだろうと思って、そのときには、新たに2年のグラントがおりる見込みがつきそうだったので、辞退しようと思ったが、「折角、呼ばれたのだからとにかく面接にいって、万が一、オファーが出たら、その時に辞退するかどうか考えたらいい」と妻に言われ、こうやって、遠路はるばる、この四方を山に囲まれた田舎町へと出て来たのであった。この県の県庁所在地である駅のそばの寂れたビジネスホテルに宿をとる。寂れていないホテルもあるのかも知れないが、駅前の様子を見ていると、この地方都市の経済規模というのはよく分かる。翌日、訪れた東京の銀座の様子から察しても、実は日本全体が単に不景気なだけなのかも知れない。

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